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泣ける話

なあ、お前と飲む時は

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なあ、お前と飲む時は

なあ、お前と飲むときはいつも白○屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。

俺が貧乏浪人生で、お前が月20万稼ぐフリーターだったとき、おごってもらったのが白○屋だったな。

「俺は、毎晩こういうところで飲み歩いてるぜ。金が余ってしょーがねーから」

お前はそういって笑ってたっけな。

俺が大学出て入社して初任給22万だったとき、お前は月30万稼ぐんだって胸を張っていたよな。

「毎晩残業で休みもないけど、金がすごいんだ」

「バイトの後輩どもにこうして奢ってやって、言うこと聞かせるんだ」

「社長の息子も、バイトまとめている俺に頭上がらないんだぜ」

そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。

あれから十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だ。

ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。

別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。

油の悪い、不衛生な料理は毒を食っているような気がしてならない。

なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店をいくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?

でも、今のお前を見ると
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、俺はどうしても

「もっといい店行こうぜ」

って言えなくなるんだ。

お前が前のバイトクビになったの聞いたよ。
お前が体壊したのも知ってたよ。

新しく入ったバイト先で、一回りも歳の違う20代の若いフリーターの中に混じって、使えない粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になってバイト続けているのもわかってる。

だけど、もういいだろ。
十年前と同じ白○屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。

そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。

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