数年前までバイトしてた。
早朝だったんで、常連にヤの字やお水の兄ちゃんや姉さんが多かった。
酒入ってる率が高く、ちょっと迷惑行為もあったが、基本的には高額購入の多いお得意さんだった。
ある日、常連兄さんが喪服で葬儀用のお供え袋を買った。
「ワイは字が下手じゃけん、店で一番上手いヤツが書いてくれんか」
店長含め、三人で薄墨筆ペン試し書き。結果自分が書いた。
兄さんは照れくさそうに礼を言い、
『自分が世話になった人の葬式だから』と目を潤ませていた。
その後、兄さんは自分のいる時間帯で少なくとも二回、 迷惑客や珍走団を静かに説き伏せて追い払ってくれた。
同じ時間帯常連の姉さんに惚れたらしく、 自分や店長がこっそり橋渡し(居合わせたら二人に世間話を振ったり)してた。
先日、辞めてから久々に店に行ったら、店長が教えてくれた。
「自分が辞めてから、あの二人が結婚したで。ありがとうって、伝言預かってる」
今も二人は常連だそうだ。
正確には兄さんが早朝、姉さんは子供と通い始めた幼稚園帰りに 自分が最後に作ったポケモンのPOPは、色あせたままその子に貰われていったそうだ。
五年振りのレジ前で泣いてしまった。