それまですぐ近くにあるものでも自分で取らないほど不精者の父が 母親が倒れてから、人が変わったように甲斐甲斐しく看病してた。
俺が世話しようとする間も与えないくらい、まるでお前の母親の前に 俺の嫁なんだと主張するようだった。
母親が逝ったのが倒れてからすぐだったので、母親がやりかけだった食器の洗い物が台所でそのままになっていた。
俺の嫁がそれに気づいて洗おうとしたら、父が
「あ、俺がやるからいいよ、あんたも疲れてるんだから」
と言われたが嫁は
「大丈夫、すぐ終わっちゃいますから」
と洗い続けようとしたら
父が横へ来て
「もう少しだけ、そのままにしておいてくれるかな」
と照れ笑いをしながら言ったそうだ。
少し泣いた。