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泣ける話

ロッキー

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ロッキー

昨日、念願の車を購入した。
その足で実家に帰って両親に車をお披露目。

両親は喜んでくれたが、なにか釈然としない気持ちが高ぶっている。

そして思い出す。
オレが7歳の頃にその犬はやってきた。
名前はロッキーという。

真っ白いフワフワの毛。
垂れた耳と目が人なつこさを表していた。

それからは毎日が一緒だった。
オレが母親に怒られると、ロッキーのいる、
玄関にゴハンを持っていって一緒に食べる。

悔しくてオレが泣き出すと
不安そうな顔をしながらも、あふれる大粒の涙をペロペロ舐めてくれた。

オレが言うのもなんだが、頭の良い犬だった。
知っている人には絶対吠えないし、知らないセールスの人が勝手に家に入ってくると必ず吠えた。

オレは頭が悪かったが、なんだかできのいい弟をもった気分だったよ。

車が好きな犬だった。
毎年夏には一緒にキャンプへ行った。

窓ガラスからずっと顔を出していた。
高速道路で顔が変形するくらいに風に立ち向かっていた姿に家族全員が笑った。

すごく幸せで楽しかった。
それから16年が過ぎたとき、その日はやってきた。

オレが社会人になって、ようやく会社にも慣れてきたころだった。

ロッキーに死期が近いことも知っていた。

体中にガンが転移して、毎日苦しそうな声を上げていた。

お医者さんも手の施しようがなかった。
十分長生きしてるけど、それでもやりきれない。

ある日、母親から会社にいるオレに電話がかかってきた。

「苦しそうにしていて耐えられない。これから安楽死させようと思う。おまえの了解が欲しい」

と。

ロッキーの鳴き声が頭の中で響き出す。
その頃になると、夜中でも朝でも泣いていた。

泣き出すと頭を撫でにいった。
すると落ち着いてまた眠り出す。

だが、それも限界だった。オレは母親に

「いいよ。楽にさせてあげて」

と言って、電話を切り、会社で泣いた。

泣くのが落ち着いた頃、また母親から電話があった。

「お医者さんのところに連れていくまえに、体を洗ってあげようと思って、洗ってあげていたら気持ちよさそうにしてたのよ」

「石鹸を手に取ろうと目を離して次に見ると、天国へね、逝ってたのよ。最期は何も泣かずにおとなしく、静かに...」

「きっとお医者さんのところで、死ぬなんて嫌だったんだろうね...このウチで、最期...」

それ以上は、母親も言葉を続けられなかった。

そしてオレも言葉にならない言葉で、

「ありがとう」

といって、電話を切った。
そしてまた会社で泣いた。

ロッキーとの約束をハッキリと思い出す。

「オレが大人になって車の免許を取ったら、乗せてやる。真っ先に乗せてやるからな」

今、オレの車は、ロッキーがつけていた首輪を乗せて走っている。

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