看護師1年目のときに出合った患者さん。
もう余命いくばくもない彼女だけど、まだ小さいお子さんがいた。
でも、いつも明るくって、楽しそうにお子さんの話をしているのが印象的だった。
つらい治療の毎日だったと思うけど、新米看護師の下手な点滴にもいやな顔一つせず、いろんな話をしてくれた。
お子さんの幼稚園での出来事とか、七五三の話とか・・・・・。
あるとき
「いつも病院にいるから、子供に私の顔忘れられちゃうね」
と彼女は呟いた。
なんて言っていいか分からずに、うまく切り返せなかったことが今でも悔やまれてる。
でも、今でもあの時何て言えばよかったかは分からないけど。
しばらくして彼女は逝ってしまったけど、最後に見た彼女の姿はとても綺麗で・・・。
先輩が死に化粧を施したけど、赤い口紅がものすごく似合っていた。
お子さんはこの美しい母親をきっと忘れないだろうと思った。
病を戦い抜いた美しくって、強い母親を。
今自分もお腹に子供を宿しているけど、彼女みたいに強い母親になりたいと思っている。