サキちんのママは重い病気と闘っていたが、死期を悟ってパパを枕元に呼んだ。
その時、サキちゃんはまだ2歳。
「あなた、サキのためにビデオを3本残します」
「このビデオの1本目は、サキの3歳の誕生日に」
「2本目は小学校の入学式に」
「そして3本目は…○○○の日に見せてあげてください」
まもなく、サキちゃんのママは天国へと旅立った。
そして、サキちゃんの3歳の誕生日。
1本目のビデオがかけられた。
(ビデオからつないだテレビ画面に、病室のママが映し出される)
「サキちゃん、お誕生日おめでとう」
「ママ、うれしいなぁ。 でもママはね、テレビの中に引っ越したの」
「だから、こうやってしか会えない。パパの言うことをよく聞いて、おりこうさんでいてね」
「だったら、ママ、また会いに来ます」
サキちゃんの小学校入学の日。
2本目のビデオ。
「サキちゃん、大きくなったネ。おめでとう……」
「ママ、うれしいな。どんなにこの日を待っていたか」
「サキちゃん、ちゃんと聞いてね」
「ママが今住んでいるところは、天国なの」
「だから、もう会えない。でもね、パパのお手伝いがちゃんとできたら、ママ、もう一回だけ、会いに来ます」
「じゃあ、魔法をかけるよ。 エイッ!」
「ほうら、サキちゃんは料理や洗濯ができるようになりました」
そして3本目のビデオ。
そのタイトルは、こう書いてあった。
~新しいママが来た日のサキちゃんに~
そしてサキちゃんが10歳の時、パパは再婚し、新しいママが来た。
3人いっしょに、3本目のビデオを見つめた。
なつかしいママの顔が映し出された。
「サキちゃん、おうちの仕事、がんばったね」
「えらかったね。 でも、もう大丈夫」
「新しいママが来たんだから」
「…… サキちゃん。今日で本当にお別れです」
「 …… サキちゃん、今、身長はどれくらい?ママには見えない」
(泣き崩れ、カメラを抱え込む姿が映る)
「ママ、もっと生きたい…」
「あなたのために、おいしいものいっぱいつくってあげたい…」
「あなたの成長を見つめていたい…」
「じゃあ、サキちゃん、これがママの最後の魔法です」 「それは『ママを忘れる魔法』です。ママを忘れて、パパと、新しいママと、楽しい暮らしをつくってください」
「では、魔法をかけます。1、2、3、ハイッ!」
そこでビデオは終わった。
しかし、サキちゃんにこの魔法は効かなかった。
パパと、新しいママにも効かなかった。
ママは、みんなの心の中に、ちゃんと残っていた。
そして今度は、サキちゃんが主役の、4本目のビデオがつくられたのだった。
天国のママに見てもらうために・・・